私に冬の当番が巡って来た。
与呂見村には当番がある。
村が出来た頃には馬と山羊の餌やりもあったし、冬は除雪が来なかったので山の下の郵便ポストに手紙を取りに行く仕事もあったが、今は鶏の餌やりと風呂焚きだけになった。
鶏の卵は各家が要るだけ持っていっていいことになっている。
また、この村には家風呂というのがない。村の中心に位置する寺(龍昌寺)には家族が一緒に入れるほどの五右衛門風呂があり、それを銭湯のように村人たちが使い回している。
朝一番、まず鶏小屋に行って生ゴミをやり、卵を確保する。放っておくと鶏たちが卵を食っちまうのだ。
そして午後2時過ぎ、風呂を焚きつける。
風呂を焚きながら、その間に再度鶏小屋へ。
水と餌をやり、再び卵を確保する。
この時期は卵は少なく、一日10個前後。
雀たちが金網の隙間から入り込んで鶏が残した餌を食べる。
まあ、雀たちも餌の少ない冬、必死なのであって、まあ少しくらい仕方ないなと思う。
4時には風呂が入れる温度になり、一番風呂を頂戴する。
一番風呂は当番の役得だ。
冬の当番はひと月に一度くらい回って来るが、
雪に埋もれ家に籠ってばかりの身には、外に出て雪景色の中を歩いたり、鶏の顔をみたり、村人に出会ったり、薪を焚いてじっくり火を見るのもいいものである。