昼過ぎ、犬たちを連れて散歩に出るのが日課になった。
ひとしきり犬たちを走らせ、遊ばせた帰り道
ふと気が付くと道の土手につくしんぼう。
この地は季節が他の地より随分と遅れているから
土筆もまだだろうと思っていたところ
ちょっと驚いた。
地面に這いつくばって見てみると
わらわら、ニョキニョキである。
土筆はスギナの子供だが
姿は似ても似つかず面白い。
穂にはズラリと胞子嚢が並んでいる。
なんだか、胞子嚢のひとつひとつ、楽しそうに笑っている。
「咲く」という字はその昔「咲う」と書いて笑うと読んだ。
確かに桜の蕾が開き始めるときは微笑んでいるし
開くと笑っている。
でも、桜だけではない
花という花たちは笑うのであり
いや、葉っぱだって蕾みが開くときは笑うのであって
勿論、つくしんぼうも笑うのだ。
生命たちにとって春は文句なく嬉しいのだ。
暫くすると胞子を飛ばし
下から青いスギナがニョキ、ニョキと出て来るのだろう。
春のイメージはやはり
わらわら、
にょき、にょき
にょろ、にょろ
笑っているんである。
版画「心象50」