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秋はアオリイカのシーズンだ。 釣りが好きな私は天気がいいとぷらりと出かける。 アオリイカを釣るのは実に楽しい。 エギ(餌木)と呼ばれるルアーを海へ投げる。 エギが沈むのを待って、ちょんちょんとしゃくると エギは海中を活き活きと飛び跳ね、 イカたちはその動きにビックリ、興味津々で近づいて来る。 そして長い触腕をそうっと伸ばし触って確かめ 気に入ったらぎゅっと抱きつく。 そこをクンと合わせエギのフックに引っ掛ける。 するとイカはジェット噴射で逃げようとするが そうはいかじと引き寄せる。 で、よいしょと引き上げる。 ここで慌てると、イカに墨をブシューと吐かれてズボンもシャツも顔までもが現代アートになっちまうんである。 という釣りである。 釣り上げたイカたちは元気一杯。 キュー!!と鳴いて思いっきり水を噴出し、エンペラ(ヒレ)をバタバタと打ち振る。 その模様の幻想的な美しさといったら見る度に感動しちまう。 ♀は可愛い斑紋模様。 ♂は横縞だ。 面白いのは、体色が瞬時にして変わっちまうこと。 感情でスイッチが入るんだろうな。 上から下へ、あっという間に変化する。 まるで液晶画面のようだ。 と、釣り仲間のつーさんが 「イカが液晶の原料になるんです。」と教えてくれた。 えーっ!!ほんまかいなー、と驚き 調べてみると、ほんとうだった。 ちょい疑ってごめんねつーさん。 なんでも、イカの肝臓から抽出したコレステロールで液晶は作ることが出来るんだそうな。 勿論、今のテレビ画面や液晶パネルの原料がイカという訳じゃないけどな。 もう一つ不思議なのはエギのこと。 普通ルアーというのは魚の形をしている。 小魚を食べる魚を騙して釣るのだから当然小魚の形をしている。 しかし、イカもアジなどの小魚を食っているのだが、アジの形をしていない。 こんな形。 この形にしか興味を示さない。 色も自然のものとは大違い。定番色はピンクやオレンジ。 一体誰が、この形に気が付いたのだろう? おそらく漁師だろう。 始めは木で作った。だからエギ(餌木)という。 木を削り、いろいろやっているうちにこの形に行き着いたんだな。 エギでイカを釣るからエギングという。 日本人得意のカタカナ造語。 今、日本中でエギングが大流行り。 比較的とっつきやすく、釣って楽しく、食って美味い、からだ。 いやほんとうに美味いんだな。 アオリイカはイカの中でも味の王者なのだが、 釣り立ての刺身なんか、シャキシャキ、コリコリとして甘いんである。 もう幸せになるんである。 それにしても、釣り場に並ぶ他府県ナンバーの車を見ると、 遠路はるばるご苦労さんというか その病的な熱情に恐れ入るのであるが、 その気持ちは分からないでもない。 やはり人は心の底から楽しく愉快なことをやりたいんだよなあ。 だから世の奥さん方にお願いしとく。 もし、旦那が釣り病に感染し、ガキのように夢中になったとしても それを微笑ましく見守ってあげて欲しい。 彼の魂の輝きが仕事や暮らしを支えるのだから。 とはいっても、あまりの重病になっちまうと仕事も暮らしも壊れちまったりして・・・・ まあそれも人生ではないか、うっはっは。(汗汗) 故開高健氏が紹介し有名になった中国の古諺がある。 一時間、幸せになりたかったら 酒を飲みなさい。 三日間、幸せになりたかったら 結婚しなさい。 八日間、幸せになりたかったら 豚を殺して食べなさい。 永遠に、幸せになりたかったら 釣りを覚えなさい。 版画「アオリクン」
by gorosuke85
| 2011-10-18 12:33
| 魚たち
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